汝欲張るなかれ(本編) - Deepblue Elysion
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2012/11/12(月) 汝欲張るなかれ(本編)

Sakak Rydell「くれるというものを貰うだけでもリスクはあるものさ」


相変わらず気ままに動き、ふらりと立ち寄ったステーションで依頼を受ける。
ずっとそういうことばかりしているが、その内容は毎回違うのだから退屈もしない。
そう、今回もいつも通り、のはずだった。

例によって立ち寄ったステーション、例によってエージェントにコンタクトを取る。
だが、返事はない。ビジフォンの背景にはエージェントと事務所の人間が慌しく動いている。
これはなにやら非常事態のようだ。俺はお作法無視で直接事務所に赴いた。

「何があった?」
挨拶代わりに一言で、非常事態であると認識していること、一応協力する気がある事を示した。


話はこうだ。
ここ最近、あるアステロイドベルトで採掘調査船が次々と姿を消すらしい。
今まさに、そういう採掘船がロストしたところなのだ。そりゃあ慌しくもなるな。
どうもそのエリアは採掘権でモメているようで、恐らくは大きな企業がが個人や小規模企業の採掘船を排除しているのだろう。

どいつもこいつも、汝欲張るなかれ。
仲良く採掘してりゃあいいのにな。
今暗躍してるそのデカいトコも、それよりデカいトコが襲ってきたらひとたまりもなかろうに。


とりあえず、微弱ながら救難信号はキャッチできるらしい。
緊急なので様子を確認することだけしか確約できないが、まずは一秒でも早く現場に向かう事にした。


目的地までは特に危険なルートではないのだが、いかんせん距離がある。なんとも暇だ。
「なあ、どう思う?」
到達までの時間も嫌な事を考える時間を少しでも潰したかった俺は随分とお間抜けな質問をお嬢様に投げかけた。

「漠然としすぎて満足の行く回答はできないと考えます」
だろうな。

「なので、的外れかもしれませんけれど、漠然と答えさせて頂きます。」
「今までの状況を総合すると、偶然立ち寄った私達が確認を引き受けて差し上げたお陰でそれ以外の手段と比較して圧倒的に早く到達できます。どうなっていても私達には非がありません。」
まあ、考えうる最善であろう事は、頭ではわかっているさ。神様じゃないし、どうしようもない事だってあるわな。
そう、汝欲張るなかれ、だ。


たどり着いたそこは随分田舎なシステムで、確かにこのあたりなら未開発のアステロイドベルトもあるだろう、そんな雰囲気だった。
ぼやけた救難信号ではあったが、追いかければアステロイドベルトらしき所にはたどりつた。
らしき、と言ったのはなんとも嫌な感じの光景だったからだ。

きっと問題の船はこれだったんだろう、というハルクの残骸。
他にも多数の採掘船の残骸がすっころがっている。
アステロイドがごろごろしている景色なのにこの残骸の山はなんとも不気味な感じだった。

「救難信号の発信元はこの残骸ではありません。」
呆けた俺を本来の仕事に呼び戻してくれたなんとも微妙な事実。

「じゃあどこだよ」
「もう少し離れた所に分析用のラボらしきものがあります。恐らくそこかと。」
たしかにそんな感じの建造物があるが、採掘船が壊されているのにラボが残っている事がいまいちわからない。
しかし救難信号がそこからなら、行かざるを得ない。
恐る恐る近づくと、微弱な電波を感知した。

「・・・こちら・・採掘・・・に・・・」
「なんだって?聞こえねーぞ!」
電波が弱い事と声の大きさは全く関係ないのにうっかり大声で問いかけてしまった。

「もっと接近しましょう。」
ゆっくりと、ぴったりとその建造物に横付けすると、クリアな音声が聞こえてきた。

「救難信号をキャッチしてくれたのか?こちらはこのエリアで撃沈された採掘屋連中の集まりだ。」
「一体なにがあった?」
「ここに来る連中はみんな海賊船に船をやられちまってな。ただヤツらは、採掘船が破壊されてしまえば何の興味も無いように消えていくんだ。」
略奪していかないのなら、排除の為雇われたカプセラなのかもしれんが…さてどうか…

「艦船のワープアウトを確認。まだ射程には入っていません。」
考えるヒマもない。とりあえず丸腰の連中を巻き添えには出来ん。俺はすぐさまラボから離脱した。

「ロックされていますね。」
「まあ一応、紳士的にお相手しようや。」
いきなりぶっ放して何もかも自分のせいにされてはたまったもんじゃない。俺は小物だからな、責任とかそういうのは大嫌いだ。

「あーあー、当方はただの調査船であり、交戦の意思無し。平たく言えば見逃してくれんかな?」
「言葉遣いからしてまるで紳士らしくありませんね。」
まあ、根が紳士じゃないからしかたないな。

さて返事は…?


「この宙域を調査および採掘する艦船はいかなるものであろうと実力で排除するのみ。」
おい!言い終わる前にミサイル撃ってきてるだろこら!

「致し方あるまい。」
「致し方ございません。」
ハモった。

一気に全兵装をアクティブにした「ただの調査船」はあっという間に三隻の武装船を実力で排除した。
まあ、ソーラックスで調査船と言い張るのは無理があるか。


さっきの難民を収容して、とりあえず戻ることにした。
全員の話を聞くからに、さっきの三隻で全部らしい。命が助かったことと、当面の敵が排除されたことで採掘が再開できると連中は盛り上がっていた。
まったく、逞しい奴らだ。

上機嫌な連中は、採掘を俺にも勧めてきた。
彼らもまた、船を再調達して採掘に向かうのだろう。
確かにここんところ採掘なんてまったくやってない。採掘専用にレトリーバーを調達したはいいものの、記念にアイスを何個か取って倉庫に飾ってるだけの始末だ。
問題の船は沈めたし、こいつら公認で採掘し放題というのは、確かにちょっと多目のボーナスというところで、悪くはない。

とりあえず俺は、レトリーバーに乗り換えて戻る事にした。




レトリーバーを収容していたドックは遠く、乗り換えはしたものの、到着まで時間がかかりすぎる。
まあしかし、さっきの採掘屋たちはバラバラのタイミングで撃破されていてのあの証言だから増援が来るとは思えない。
まあ、そもそも辺境でルートも限られている以上、増援が来るとなると俺達と鉢合わせているはずだ。
このルートでは、あまりの辺境ぶりにせいぜい一、二隻程度しかまだ船を見ていないぞ。
あのアステロイドも人に知れ渡っているわけではないから平和なもんだろう。


「到着しましたよ?」
いかん、すっかり寝てたぜ。

「念のため手前にジャンプしてみましたけれど、特に艦船の反応はありませんね。」
気が利くものだ。が、いかんせん足の遅いこの艦ではおかげ様でなかなか掘る所まで至らない。
安全と判るとそんなに欲深くなるものなのか。自分で笑ってしまう。

やっとアステロイドに横付けし、採掘を始める。
さすが採掘専用艦、今までやってきた採掘はなんだったのかというスピードで掘っていく。
だが、腹いっぱいまでにはしばらくかかりそうだ。


ヒマだ…
ヒマ…
「そうでもないようです。艦船の出現を確認、二隻です。シグナルは一応白ですね。」
さっきの妨害野郎の増援なら既にここで待ち構えているはずだ。
しかし他にここがわかる船があるのか…助けた連中が新しい採掘船を見繕って戻るにはちょっと早過ぎる…
あの船、さっき通りがかりに見たやつじゃないのか。
まさかステルスで尾行されてた?それでもここを知ってなければ普通来れない筈だ。
方角だけでアタリをつけてきた…?ならこいつらはプロ中のプロだ。

二人は同時に叫んだ。
「ズラかるぞ!」
「ロックされました。」
ハモらない。

一方が高速で接近してのジャミング、一方が高火力船か、さっきのやつらとは全然違う、やはり本職か。
これは…


「詰んだな。」
「詰んでいますね。」
ハモった。


ものの数秒あれば行動不能は確定だろう。拿捕されるにしても、撃沈されるにしても問題はそこから逃げられるかどうか。
その数秒の間にすべき事を考えよう。

この宙域にあいつらの輸送艦がいない、積荷が欲しいわけでもないだろう。
無言で撃ち込んで来ているのだから要求があるわけでもないだろう。
単に息の根を止めたいだけという事になる。
拿捕する気もないのだから、やっぱり撃沈まで持っていく気だ。なら、ポッドも狙われる。

「爆発前に飛び出…」
身体に衝撃が走る。言い終わる前に脱出ポッドは飛び出した。
奴ら、爆発時のタイミングで脱出すると踏んでいたのだろう、意表を突かれたようで、爆発時にはすでにジャンプ体制に入った俺達に追いつける事はなかった。


でたらめに跳んだ何も無い宇宙空間。
財布に深刻なダメージを負った俺としては呆然としたい所だが、とりあえず丸裸に等しいこの状態から抜ける為ステーションに向けよう。
辺境だからまず、ステーションのあるシステムまで跳ばないとな。



やれやれ…


光の尾をなびかせて逃げ帰る脱出ポッドは、流れ星のようだったかもしれない。
もしこれに祈った奴がいたら、100%不幸になると思うがな。

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